2018年10月19日金曜日

合弁会社クロストレックス社


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なぜ業務提携はうまくいかないのか。

業務提携や共同商品といえば、PRやIR的に聞こえはいいのですが、実態として長続きするものは多くないと感じています。

冒頭の問いに対する私なりの一つの解は「資本関係を契る提携」です。やはり身銭を切るからこそ両社が本気になれるという側面もあると思います。もちろん、身銭を切るに至るまでは、市場に対する課題認識、将来あるべき姿の共有、現実的なビジネスモデルや差別化、出資比率など多くのことを合意していく必要もあります。

昨日2018年10月17日の取締役会で、当社はログリー株式会社とコンテンツマーケティング支援の合弁会社「クロストレックス株式会社」の設立を決議いたしました。資本金は3,000万円で、出資比率はログリー51%、ビルコム49%になります。

ITmedia マーケティング「ログリーとビルコム、B2B企業向けコンテンツマーケティング支援事業を行う新会社設立へ」

CNET Japan「ログリーとビルコム、BtoBコンテンツマーケティング支援の合弁会社を設立」

MarkeZine「ログリー、ビルコムと合弁会社「クロストレックス」を設立 BtoB企業のコンテンツマーケを支援」











ログリーさんとは、JIAAのネイティブアド研究会、ネイティブ広告部会を通じて出会い、それ以来「良質なコンテンツ・インターネット広告」を目指す同志としてお取引を通じた関係にありました。一方、そうした志とは裏腹に、昨今のレコメンド広告やインフィード広告が、「枠」と「コンテンツ」の両方の観点でみても、ユーザーの体験に沿ったものになっていないと感じることも多くありました

合弁会社クロストレックスでは、こうした課題を、コンテンツの質の担保、配信ロジック、分析技術を用いて解決しようと試みます。上述したコンテンツマーケティングの中核にあるのは、媒体社様と一緒につくるスポンサードコンテンツ、広告主様と一緒につくるオウンドメディアです。合弁会社では、こうしたコンテンツの制作・管理・配信・分析それぞれのプロセスで独自の技術を開発してまいります。特に最終成果(問い合わせや資料請求などのコンバージョンポイント)に至るまでの、態度変容プロセスの定量化や、インターネット広告を通じたブランディングの支援に注力する予定です。

両社が保有する知見や技術を統合しながら、一つのビジョンに向かって進んでいく。これほど光栄なことはありません。広告主の皆さま、そして媒体社の皆さまに価値還元できる会社として11月1日より事業を開始いたします。ご支援の程よろしくお願い申し上げます。

太田滋

2018年10月8日月曜日

創業15周年


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2003年10月8日。ちょうど15年前の今日、ビルコムを創業しました。広告、PR、販促、ネットといった業界の縦割り構造を変えたい。お客様にとっては全て手段。機能の提供よりも目的の達成へ。だから社名をビルコム(=Building Communications:新しいコミュニケーションを創る)と名付けました。売上高ゼロ、オフィスは間借り、平均年齢24.3歳、机や椅子は手作り。そのような状況で仲間2人と会社を立ち上げました。あれからちょうど15年経った本日2018年10月8日、15周年を機にブログを書こうと思います。本当は10周年、20周年という10年単位で振り返りたかったのですが、10周年を迎える5年前の2013年は会社が大変な時期で祝うどころの状態ではありませんでした。また、当社のような法人向けの事業を営む者が周年記念を祝うのも内輪盛り上がりのようで小っ恥ずかしい気もしていました。そもそも、ひたすら前を向いて走り続けているので自分の誕生日はおろか、自社の創業記念日なぞ自覚していないということもあります。今日が三連休で良かったです。

さて、15年を振り返ると大きく変わったのは二つです。

一つは、創業のときに強い問題意識として持っていた業界の縦割り構造が必然的になくなってしまったことです。広告会社はもとより、広告関連会社(PR会社、制作会社、イベント会社など)がマーケティング領域のほとんどを手掛けるようになり、業界の縦割り構造は、もはや経路依存性でしかなく、異業種格闘戦が始まっています。業界の縦割り構造が必然的になくなった、と書いたのは技術革新による企業のデジタル化によって縦割り構造が意図せずになくなったからです。ソーシャルメディア、AI、IoTといった技術革新が、広告関連業界の境目をなくしてしまいました。例えば、コンテンツマーケティングが広告かPRか、デジタルかリアルかという議論はもはや哲学の話でしかありません。コモディティ化市場における競争軸を転換せよ、というお題があったとして、その課題に向き合う会社は無数にあるのです。コンサルファームのデジタル領域参入も含めた「エージェンシーの同質化問題」にどう向き合うのかというのが一つ目の変化です。

もう一つの変化は、これは私の内発的な経営に向き合う考え方の変化ですが、信念をもって継続すれば機会は必ずやってくるということに気づいたことです。いみじくも、先日ノーベル医学生理学賞の受賞が決まった本庶先生が会見で「研究をやめようとは一度も思わなかった」「何でもあきらめない」と仰っていました。私は、これまで手広く色々なことに挑戦し、変革することを是としていました。時代のニーズに呼応しながら、事業をピボットしたり、新規事業を立ち上げたりすることは、その事象だけをみれば格好いいのですが、そうそう上手くいくものではありません。当社でも、BtoC事業や、技術先行型の新規事業、海外展開など数多くの失敗を経験しました。そうした失敗経験から得た知見の要諦は、お客様を起点に考える大切さです。お客様を変えない。「自分がやりたい」という供給者論理に陥らない。お客様の欲求と自社の提供価値をぶらさない。お客様の欲求に対して差別化された価値をとことん突き詰め、信念をもって継続していけば、多様な機会に恵まれます。これは10年、20年と同じお客様に向き合い続けた者にしかわからない感覚だと思います。色々な回り道をしましたが、一つのことに愚直に向き合い、他者から何と言われようが信念をもってやり続ける。それは人生の美しい在り様だと感じるようになりました。

商業的な成功と人生の幸せは違うよ、と誰かが言っていました。当たり前のことですが、資本主義の中で経営に携わっている身としては、まず商業的な成功をせよ、そしてそれが人生の幸せであるという、抑圧された社会の中で生きています。何かものすごいスピードの中を走っているような、メールからチャットにコミュニケーション手段が変わり、時間じゃなくて生産性とか、そういう何かをしなければならないというToDoの世界に私たちは生きています。また、コミュニティごとに同調圧力が瀰漫していて、その同調圧力の中で差別化が求められます。同調しながら差別化するという矛盾。伝統的なスーツ&ネクタイの世界における同調圧力、ベンチャー企業の世界における同調圧力、広告業界における同調圧力、経営者ネットワークにおける同調圧力、アカデミックの世界における同調圧力。これらは良くも悪くも不自由の中の自由です。

これからの未来へ。

いつまでも無知でありたいと思っています。無知とは素直に拳拳服膺でいること。最近は、知識と経験が邪魔だと考えることが多くなりました。知識と経験を積むと、次こうなるよね、というものが見えてしまう。その見えている世界は、自らの知識と経験の常識という枠組みから出てきているものなので、まさにToDoの世界であり、同調圧力の奴隷になっている証左です。自分たちがやってきたことや常識を壊す。壊すのはとても難しくて、どうしても既存の次元における改善や進歩のレベルに留まってしまいます。そうではなくて、今までやってきたことを活かしながら、いかに次元を変えて、路線を転換させることができるか。それがお客様のお役にどう役立つのか。就中このことだけを突き詰めればいいのではないかと思うわけです。そう、無知になろう。

他人資本ゼロの自己資本だけで15年続けられたのはすごい、というような言葉を社員からたまにもらうのですが、それは逆で、15年続けることができたのは社員のお陰だと心から思っています。特に、色々な辛い時期があっても、辞めずに残ってくれた役員、社員には本当に感謝しています。また、いつも私たちにご期待くださっているお客様がいてこそのビルコムです。5年、10年と長期に亘りお取引を続けてくださっているお客様には、本当に感謝してもしきれません。今後も、社員一同、信頼関係を壊さないよう、約束を守り、礼儀を忘れず、真摯な仕事をやってまいります。そして、私たちのような若い会社を支えてくださっているパートナー会社の皆さまにも御礼を申し上げます。

15年の知識と経験を拡張しながら壊していく。そうして無知になった状態から、物事の本質を突き詰めてみる。新たな次元に価値を転換しながら、お客様の欲求に応えてまいります。業界の縦割り構造が瓦解した今、もはやPR会社というアイデンティティの矜持を持つ必要はありません。今の時代、アイデンティティクライシスは必至。引き続き皆さまのお力をお借りできれば幸いです。15年もの年月で交錯した方々とこれからの15年に向けて。今後ともビルコムをよろしくお願いいたします。

2018年10月8日 ビルコム株式会社 創業者 太田滋

<番外編>
創業期の写真を見つけました。

創業からちょうど1週間目の2003年10月15日。世界最大のPR会社Edelmanの創業者Daniel Edelman(故人)とシカゴ本社にて。















たぶんNYCだったと思う。創業メンバー3人にて。左から現・グロービスの鳥潟さん、アウルの北村社長。二人ともイケメンすぎる。















恵比寿の間借りオフィスにて。2004年3月くらい。最前列の色黒な男性はカリスタの前田社長。前列の女性は左からフリーランス協会の平田代表と当社取締役の早川。私の右隣は社員の櫻井。















2004年7月ごろの社内イントラ「ビルカフェオンライン」。ここでモラルが涵養されました。



2018年4月2日月曜日

18新卒入社式式辞「可能性を否定しない」


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2018年度の新卒3名が本日より入社いたしました。入社式の式辞では「可能性を否定しない」ということを述べました。

人生100年時代において、自分の可能性を否定せずに、ゆっくりでもいいから一歩ずつ継続していくことが重要だと感じています。

以下は式辞で述べた原文です。

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2018年4月2日
2018年度新卒入社式 式辞
ビルコム株式会社
代表取締役兼CEO 太田滋

 皆さん、入社おめでとうございます。2018年度の新卒エントリー数は480名と非常に多くの方にご応募いただいた中、優秀な3名の皆さんをビルコムの仲間として迎えることができ、本当に嬉しく思っています。本日からの入社を心から歓迎するとともに、大いに期待しています。本日は式辞として「可能性を否定しない」ということを述べたいと思います。

 ちょうど2週間前の3/19にNHKで放映された「プロフェッショナル仕事の流儀」は、これまで存在しなかった新しい仕事を特集していました。具体的には、ユーチューバー、プロゲーマー、データサイエンティストの3職種です。ユーチューバーはHIKAKIN(ヒカキン)さんが出演されていました。この番組は、最後に出演者がプロフェッショナルとは何かを定義するのですが、ユーチューバーのHIKAKINさんはこう述べていました。「プロフェッショナルとは、継続する人だと思う。継続していればチャンスがやってくるので、継続して努力しているとチャンスを掴めると思うので、(プロフェッショナルとは)継続する人です」。

 先週、ビルコムでは勤続年数1年、3年、5年、10年の人たちがそれぞれ表彰されました。人材の流動性が高いこの時代に、一つの会社で5年、10年と勤め上げることは、継続の力という観点でとても素晴らしいことです。私は物事を継続していくための要諦があると思っています。それは、「自分の可能性を否定しない」ということです。皆さんは、これから研修を受けて5月中旬に配属されることになります。仕事をしていくと、様々な試練にぶつかることでしょう。そのときに、この仕事は自分に向いていないのではないか、これは自分にできないのではないか、自分の強みを活かしているのか、と疑問に感じることもあるでしょう。そうしたときに、自分の可能性を否定して欲しくないのです。困難にぶつかったときに、自らの可能性を否定してしまうことは、将来の皆さんのキャリアを狭めてしまうからです。人生100年時代の中で、始めの1年や3年で自分の可能性を否定する必要はありません。

 皆さんは、今、真っ白なキャンバスを持っています。その真っ白なキャンバスにどのような夢を描くかは皆さんの心積もり次第です。自分の可能性を否定せずに、継続していくことで、ビルコムの事業ミッションである「PRでクライアントの事業に貢献する」を一緒に実現してまいりましょう。新しいPRコミュニケーションを生み出すビルコムへの入社を心からお祝いいたします。誠におめでとうございます。



2018年2月14日水曜日

書評紹介:広告をやめた企業は、どうやって売り上げをあげているのか。


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上梓させていただいた書籍『広告をやめた企業は、どうやって売り上げをあげているのか。』の書評を多くいただいております。

「TV広告の限界性について強い指摘をされているが、本当にそうなのか。」

「タイトルがとても偏った広告否定とみえるのが残念。」

「PLSAモデルはわかりやすいが、S(simulation)の日本語訳を評価にしたのはなぜか。」

といったご指摘・ご指導もいただいております。

ご本人からの承認を得て、私個人宛にいただいた書評を、趣旨を変えずブログ用に一部編集して、幾許かご紹介させていただきます。

また、第1章だけダウンロードできるようになりました。PDFはコチラから

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○某大手食品会社 駒瀬さまより

「拝読しました。ご自身で書かれている通り、成功事例オンパレードやポジショントークではなく、今の事象を客観的に捉えた応用性のある内容がきちんと実現できていると思います。しかも、とても平易で読み易いです。

タイトルがやはり残念ですね。すごく偏った広告否定の本と思われてしまいます。広告とPRの話は、まだ、当面続くホットトピック。本来、伝達主体と伝達媒体は別の話なのですが、世の中の論調は、TV広告からSNSを主体としたPRへ、と語られてしまう。

媒体の話は、TVのフィジカルなリーチが落ちたのだから、デジタルで補完しなければならない。これは自明。一方、主体の話は、以前は広告として企業が直接消費者に語りかければ良かった時代から、第三者経由の発信比率を高めていかないと信じてもらえなくなった。

テレビに以前のリーチがあれば、テレビ広告+テレビを出口としたPRが最強。6年前は、私もPRのゴールはとにかくTV。情報番組にどう取り上げてもらうかをメインに考えてました。今は日本でもTVが以前の様に効かない、米国はとうの昔から効かない。そうすると書かれている様に、デジタル界のホットスポットやオピニオンリーダーを探していく必要がある。手間がかかり効率が悪いけれど、仕方がない。

これはある意味、マレーシアで体験したことです。マレーシアは3つの民族で言語が違うので、そもそも、TVも新聞もマスメディアでないという、究極の効率の悪さ。変わりゆくデジタルプラットフォームの趨勢と向き合いながら、知見をため続けるしかない。

PLSAも非常にわかりやすいです。Attentionだけとっても仕方がない。Perceptionまでもっていく必要がある。Listingは、選択集合を意識化する。ひとつ質問は、評価はなぜsimulationにされたのですか?Assessmentではなく。日本語は「評価・疑似想定」等とすると、より説得力が増すと思います。単に評価という日本語だけを見ると多くの人は evaluation や assessment を想起してしまうと思いますので。」

バタフライ・ストローク・株式會社
代表取締役 青木さま

「早速、拝読しました。機会があったら、うかがってみたかったPRの仕事の仕方、考え方が明快にわかりやすく書かれており、とても得した気分になると共に、今後のプロモーションの考え方の勉強になりました。感謝します。

○デザイナー 井澤さま

「読了しました。ビルコムの活動の舞台裏が垣間見えるようで、おもしろかったです。いや、おもしろかったではちょっと足りない。すごくおもしろかった。論旨も明快で読みやすかったです。

PLSAモデルは、ややこしい現在の状況をシンプルにまとめていて秀逸。特に「買ったらどうなるか」というシミュレーションのステップはユニークで納得度も高い。機能的評価については、ZOZOの採寸スーツ的なものやVRなどが進化していくと劇的に変化していきそうですね。

また、今後ウェアラブル端末が普及してもっと通知社会になっていくと、リスティングとアクションの間にプッシュ通知のステップが入ってくるんだろうなと思いました。(個人的感想)初心者にもわかりやすく書いてあると思います。良書。」
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多くの叱咤激励をいただき感謝しております。お陰様で青山ブックセンター六本木店の週間総合ランキングで一位になりました。皆さまの実務のお役に立てれば幸甚です。Amazonリンクはこちらから



2018年1月28日日曜日

書籍「広告をやめた企業は、どうやって売り上げをあげているのか。」太田滋


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ソーシャルメディア時代のコミュニケーション戦略論に関する書籍を上梓させていただくことになりました。


「広告をやめた企業は、どうやって売り上げをあげているのか。」 

https://www.amazon.co.jp/dp/4295003085/





















本書の要諦は、ソーシャルメディア時代の新たなコミュニケーション戦略論です。具体的には、1)企業からの情報発信ではない「第三者視点」、2)売らんかなの演出にならない「事実性」、3)熱量を持った生活者の文脈を大切にする「マイクロコンテキスト」という三つを踏まえた”PR的コミュニケーション”フレームワークや戦略の立案といった実務目線を交えつつ、可能なかぎり体系的に解説しました。




PR的コミュニケーションで売り上げをあげる、という企業側の視点だけではなく、「モノではなくコトを欲しがる人たち」にも着目して、いわゆる「コト消費」を3つに分類し、ソーシャルメディア時代の消費の在り方について解説いたしました。




上述した企業側のアプローチ、生活者のコト消費を踏まえて、ソーシャルメディア時代の消費心理プロセス「PLSAモデル」を規定し、PR的コミュニケーションの特徴である有意な情報波及を促す「シャンパンタワー型コミュニケーション戦略」について具体的な手法を解説しました。
































ソーシャルメディア時代のコミュニケーションは「信頼」が競争軸になる時代です。本書がマーケティングに携わるあらゆる立場の方々の一助になれば幸いです。以下に目次と「はじめに」を転載いたしました。


<目次>















<はじめに:どうして「ちがい」が生まれたのか(本書より転載)>


 「広告に代わる新たなコミュニケーション手法はないか」


 この数年、企業の事業担当役員や広報宣伝部門の責任者からこうした相談をもちかけられることが増えている。


 彼らが異口同音に語るのは、広告がかつてのようには効かなくなった、あるいは、かけた費用に見合うだけの効果が得られなくなった、ということだ。


 その結果として、広告はいよいよ売り上げに十分に寄与できるものではなくなってきている、という。


 本書は、そんな悩みに答えるべく、筆者が代表をつとめるビルコム株式会社がもつ、広告に代わって売り上げをあげることができるコミュニケーション手法に関する知見をまとめたものだ。


 2003年に創業して以来、私たちはPR会社として「ブランド価値で事業に貢献する」ことをミッションに掲げ、東証一部上場企業から地方にある中小企業まで、さまざまな業種や規模の企業に対し、マーケティングの戦略立案にはじまって企画実行にいたるまでをお手伝いしてきた。そのなかには、世界的な広告賞として知られるカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルを含め、数々の栄誉ある広告賞を獲得した仕事もいくつかある。私たちの手法は広告とは異なるものだが、それほどに「広告に近いところ」で活動してきた。


 だが、近くはあっても、「広告が効かなくなった」という声が高まるなかで、私たちの「広告ではないコミュニケーション」の効果はおとろえていない。それどころか、高まっているといってもいいくらいだ。「広告ではないコミュニケーション」すなわち、PRの考え方を発展させた独自のコミュニケーション手法によって、生活者の共感を勝ち取り、企業の経営課題を解決し、経営目標の達成に貢献しつづけているのである。


 どうして「ちがい」が生まれたのか。それは、どこからくるのか。冒頭の問いかけに対する答えの手がかりがそこにある。


 本書では、それを読み解くために、広告的アプローチが効かなくなったという客観的な事実に着目し、いま起こっている事柄を冷静に読み解くところからはじめた。


 そして、一方的なポジショントークに終始したり、成功した事例の紹介にとどまることのないよう、社会において生活者のベースとなっているコミュニケーションのあり方についても、変化の表層だけでなく、人間心理を含め、より根っこにあるものの分析に取り組んだ。


 さらに、それらをふまえて「つぎの時代のコミュニケーション」に必要な要件を私たちなりに導き出したうえで、広告に代わって売り上げに貢献できるコミュニケーションについて、フレームワークやメソッド、戦略の立案といった実務目線を交えつつ、可能なかぎり体系的に解説を試みている。


 よくいわれるように、市場の成熟化、少子高齢化、ブランドの老齢化……と、現代の日本企業が直面している課題は多岐にわたっている。コミュニケーションの手法をあらためたからといって、そのすべてを即座に解決できるわけではないかもしれない。


 だが、あらためてソーシャルメディア時代のコミュニケーションを見つめなおしてみて、企業と生活者との関係には、まだまだ大きな可能性があると感じる。あるいは、これまでは存在感を発揮しきれずにいた規模の小さな企業にも、今後は新たな可能性がもたらされるのではないだろうか。


 本書ではそこに、私たちなりのひとつの解を示したつもりだ。これを手がかりに、さらにすぐれた解を読者のみなさまと見つけていくことができればと願う。


ビルコム株式会社 代表取締役 兼 CEO 太田滋