家庭内に設置するスマートスピーカー・AIスピーカーに注目しています。約8,300億円の折込広告・DMといったエリアマーケティングを中心とするプロモーション市場に変革をもたらす可能性があるからです。プラットフォーマーが次々と参入していますね。
・LINE 「WAVE」
・Apple 「HomePod」
・Amazon 「Amazon Echo」
・Google 「Google Home」
・Microsoft 「Harman Kardon Invoke」
・Essential 「Essential Home」
端末は「スピーカー」や「ホームアシスタント」と呼ばれていますが、これは広く普及させるためのフックであって、本命は端末と人間がやり取りした会話=音声や文字といったメタデータになるでしょう。蓄積したメタデータを教師データとして、家庭内端末に広告を配信することで収益エンジンを見出すか、もしくはプラットフォーマーが自社で保有するコンテンツサービスと連携させていくかのいずれかだと推察しています。受動メディアとして家庭内で機能していたテレビを観なくなった層のオルタナティブと考えればその市場規模は折込広告やDMだけに留まりません。スマホは能動で、チコチコ文字を打ったり、アプリをダウンロードしないと欲しい情報にアクセスできないのが面倒だなという消費者インサイトもあります。
ただ、この家庭内端末はハード的にも、ソフト的にも、まだ初期段階にあるのではないでしょうか。まず、端末は音声ではなく、Amazon Echo Showのように家庭内サイネージとして発展していくことになるでしょう。Hey, SiriとかHey, Cortanaなどと呼びかけてから反応するのはスマホで文字を打って検索する行為を音声に変えただけに過ぎません。毎日必要な情報、例えば時刻や天気、ニュース、音楽といったライフコンテンツは始めからサイネージ上に表示していくのが自然な流れです。
ソフト的には人工知能・AIといっても、現状は音声をテキスト化するところは深層学習を用いているかもしれませんが、必要な情報を返すところはルールベースで参照してフォーマット化された文法に情報を入れ込んでいるように思います。現時点ではルールベースの方がおかしな日本語にならず正確な回答を導出することができるからです。例えば、「今日の天気は?」と聞けば、「今日の(XXX市)の天気は、(晴れ/曇り/雨等)で気温は(YY度)です。」といったものです。これは、今後、Data(数字) → Information(情報) → Intelligence(提案)といった形で昇華していくことになるでしょう。例えば、「今日の港区の天気は曇り時々雨なので傘を持っていきましょう。最高気温は35度で今日は外出が多いので熱中症に気をつけてください。」というようにスケジュールや近所の小売店の情報と統合してパーソナライズドされた情報が配信されていくイメージです。一方で、Alexaもそうらしいのですが、雑音から人間の声だけを抽出する技術はかなり進化しているようです。
端末の普及、換言すれば端末の内部に埋め込まれている"日本語向けの”AIアルゴリズムをいかに多くの人に使ってもらうか、そこで蓄積した教師データをどのように家庭内メディアとしてプロモーション市場のイノベーションに活かしていくのかといった視点でみていけば以下の5つの問題に突き当たります。
1. スマートフォンとの疎結合の問題
家庭内端末から情報を得ても、それはやはり外に持ち出していかなければプロモーションに活かせません。モノを買うのは圧倒的に小売店が多いからです。そうなると家庭内端末とスマホ(アプリ)との疎結合をソーシャルメディアでやるのか、QRコードでやるのか、もしくはメールでやるのかといった疎結合のインターフェイスをどうシームレスにやるのかといった問題があります。
2. リテールテック(Retail Tech)との連携問題
広告とプロモーション市場は現状、断絶されているように思います。米国ではAmazonがホールフーズを買収し、Googleがウォルマートとネット通販分野で提携したように小売店の現場が変わらなければ家庭内端末の収益エンジンは回らないように思います。
3. プライバシーの問題
家庭内端末はどこまで家庭内の会話を聞いているのか、それをどうやって消費者が感情的に気持ちが悪くならないくらいまで寄り添っていくのかといった問題です。例えば、私が帰宅したときに家庭内端末が「太田さん、お帰りなさい。今日は忙しかったですね。いつも飲んでいる炭酸入りの水がなかったので注文しておきました。今週末は太田さんの好きな牛乳が特売なのでクーポンをスマホに送っておきますね。」のようなことまでやり出したとして、それをもし、私が自ら情報を提供していなかったとしたら慣れるまでに少し時間がかかるかもしれません。
4. 端末普及のスピードの問題
エリアマーケティングを目的とした家庭内サイネージ端末の成功の鍵は、まず前提として端末が家庭内に普及していること、その上でメーカーや小売などのプレイヤーが連携している必要があります。小規模な実験を誰かが主導して積み重ねていく。スマホが爆発的に普及していったようなスピード感で進むのか、それとも実はゆっくりと5年とかのレベルで進むのか、何が起爆剤になって普及していくのかはまだ誰も読めないといった状況ではないでしょうか。
5. 広告フォーマットの問題
端末が普及して上述した諸問題が解決したとしても、市場がスケールするためには広告フォーマットを誰が誰と整備していくのかといった問題があります。未だかつてみたことのないIoT・IoEがある世界観の中で企業と消費者にとって良質な広告フォーマットは何なのか。少なくとも商品と価格が一覧化されていて、そこから自分の頭でゼロから考えながら商品を選ぶ現状の折込チラシのようなフォーマットでないことは間違いありません。
こうした中で私たちに何ができるのか。それを今、まさに考えているところです。詳しい方・ご興味ある方がいらっしゃれば是非お話させていただければ幸いです。
※写真はイメージです。
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