2021年4月1日木曜日

21新卒入社式式辞「大きな夢を持とう」


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本日、無事に2021年度の入社式が執り行われました。昨年に続きコロナ禍で大変な時代ですが、気持ちを新たに一歩ずつ前に進んでいきたいと思います。

式辞で述べた原文を転載します。

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 2021年4月1日

2021年度 新卒入社式 式辞

ビルコム株式会社

代表取締役兼CEO 太田滋


 本日からビルコムの仲間になった皆さん、入社おめでとうございます。私たちはPR業界の最前線に立っています。時代は広告からPRへ、枠から人へ、施策からメッセージへと移り変わっています。その時代を牽引するべく、全員が懸命に努力しているところです。


 PRという仕事は平たく言うと、「意味付けする行為」です。企業や商品をより輝かせるために意味付けを行います。生活者にとって差別化が難しい商品をどのように意味付けするのか。社員にとって職場環境をどのように意味付けするのか。採用候補者にとってその会社で働く意義をどう意味付けするのか。顧客、社員、採用候補者、株主、地域、社会といったステークホルダーそれぞれにとっての意味付けを行うという、ある意味高尚なことを生業としているわけです。知力と人間力で顧客価値を生み出すエージェンシー、データ分析のSaaS「PR Analyzer®」、唯一無二のメディアデータベースという三つの事業でビルコムは独自のポジションを確立しています。


 大量伝達・大量消費の時代は終焉しました。きめ細やかなSNS時代のパブリック・リレーションズが必要になったわけです。情報の流通構造が複雑化し、時々刻々と世相が変化する中で私たちは毎日コミュニケーションの技術を磨き、経験を積み、知見を蓄えています。


 今までの大学生活とは打って変わって、お客様から対価をいただき、それ以上の価値を自ら主体的に提供することは本当に大変なことです。プロフェッショナルとして選ばれて、輝くためにはどうすればいいのでしょうか。社長である私と、新入社員である皆さんが同じようにできることは何でしょうか。


 それは大きな夢を持つことです。自分が将来なりたい夢を描くのです。ビルコムのビジョンは「世界をより感動できる社会にする」です。社会的矛盾を解消し、新しい文化を創造する。そして努力が報われる社会にする。私たちは良質なコミュニケーションを通じて世界をより感動できる社会にするという夢を持っています。会社、ひいては社会から選ばれるプロフェッショナルになっていくためには、目の前の1にフォーカスすると同時に大きな夢を持ち、その夢を忘れずに努力を重ねていく粘り強さが必要です。今日は皆さんが社会人になった初日です。その記念すべき日に、皆さんが10年後に実現したい大きな夢をノートに書いてみてください。


 「できない理由より、できるための手段を考えよう」というビルコムの口ぐせがあります。創業から今までずっと大切にしている言葉です。できない理由を並べることは簡単です。時間がない、お金がない。他人のせい、会社のせい。しかし、できない理由を並べても何も変化は起こりません。どうすればできるのか?この一点にフォーカスして考え抜き、行動することで未来が拓けます。


 今、私自身が、この言葉の意味を重く受け止めています。昨年から新しくやり始めたことがありました。まず、コロナという新たな脅威に対して経営の在り方を変えたことです。月次評価システム、リモートワーク、幅広い業務のオンライン化など多くのことを始めました。次に、青山学院大学大学院で教鞭を執り始めたことです。週に一回90分の授業を15週間続けることは社長業との兼ね合いの中で大変なことです。最後に、プライベートではトライアスロンを始めました。トライアスロンはスイム・バイク・ランニングの三種目を連続して行います。体力だけでなく精神力も求められるスポーツです。幾つになっても新しいことに挑戦することが私の生き様です。


 挑戦は苦労を伴います。何度も「辛いな」「大変だ」「時間がない」と思ったことがありました。しかし、社内外の仲間に支えられて全てをこなすことができたのです。「できない理由より、できるための手段を考えよう」の裏側には仲間がいるのです。一人で抱え込む必要は全くありません。厳しくも優しく、ともに悩み、喜怒哀楽を分かち合える仲間がビルコムにいます。仲間とともに大きな夢を実現しましょう。


 皆さんには、ビルコムという会社で「これがやりたかったことだ」というものを見つけて欲しいと思います。天職は何歳になってもわかりませんが、他者から「ありがとう」「助かった」と言われるような仕事をして欲しいと心から思います。新入社員も、今いる社員の皆さんも、めちゃくちゃいい仕事をしていきましょう。本日はビルコムに入社おめでとうございました。




2020年4月25日土曜日

企業経営のニューノーマル


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今月の社内報で「企業経営のニューノーマル」について書きました。

<社内のesaにアップしたメッセージ>
















以下に原文を転載します。

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新型コロナウイルスが国内で猛威を振るってはや2ヶ月が経ちました。当社では2月21日に対策方針「事業継続と安心安全の両立」を策定しました。その後4月1日と2日の両日で在宅勤務のトライアルを実施し、4月7日から全従業員を対象に原則在宅勤務を行うことになりました。この社内報を書いている4月25日現在も在宅勤務の状態が続いています。私なりに今考えていることを皆さんと共有したいと思っています。

○アフターコロナのニューノーマル
ニューノーマルとは「新常態」と訳され、新しい常識を意味します。新型コロナによって急激に変革を求められた企業が以前と元通りになるということはないでしょう。新型コロナが収束した後のいわゆるアフターコロナの世界は様相が大きく変わります。その変化を一言でいえば、「企業活動が場所と時間の制約から解放される」ということです。単に働き方の変化だけでなく、経営指標、予算配分、人事制度等々の企業経営におけるニューノーマルについて考察してみます。

○リモートワーク至上主義にはならない
緊急事態宣言が発出されて、皆さんに最も大きく影響があったのは働く場所ではないでしょうか。外出自粛と出社7割減の要請を受けて在宅勤務になりました。アフターコロナでも多くの企業が、在宅勤務をはじめとしたリモートワークを採り入れるでしょう。在宅勤務がもたらす影響は三段階あると思います。まず日本では在宅勤務が一般的でなかったことと通勤時のストレスが過多だったことから、通勤時間が減り、満員電車のストレスから解放されたといったポジティブな反応がありました。これがフェーズ1にみられる短期的な効果です。次に在宅勤務の歪みが露呈しました。歪みとは、孤独感や不安、連帯感の欠如、オンとオフの切り替えの難しさ、運動不足によるストレスの蓄積です。人間は他者と「関わる」という基本的欲求を持っています。その欲求が満たされないと喪失感や不安に襲われます。自分から求めないと他者と関わることができない状態は長く続きません。このフェーズ2で仕事の生産性は逓減していきます。最後は業務プロセスの変革です。フェーズ1と2を経て、どのように業務プロセスを変えて定着させていくのかというのがフェーズ3です。こう考えていくと、アフターコロナは、会社勤務、在宅勤務、サテライトオフィスといった複数の拠点で仕事をする働き方が定着していくでしょう。その場合、働く場所を自由に選べるようにするのか、会社が指定するのかといった運用は業種や職種によって対応が変わるでしょう。

○持続的成長に社会的安心が加わる
環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)に配慮した企業経営を「サステナビリティ経営」といいますが、アフターコロナではサステナビリティに含まれる要素が増えるでしょう。具体的には、環境、社会、ガバナンスに加えて、「社会的安心(Social Well-being)」が加わるのではないでしょうか。企業は従業員の健康と安心に対してこれまで以上に配慮する必要が出てきます。例えば、感染者が1人出たことで本社を全て閉鎖せざるを得なかったことを受けて、オフィス拠点を分散させるとか、子育てと仕事を両立するためにコアタイムを廃止したり、ベビーシッター補助金を出したりといったことです。

○ミッションドリブンな人が評価される
リモートワークが当たり前になると、仕事のプロセスや業務にかけた時間が見えにくくなり、定量的な成果への貢献がより求められます。また、個人で蓄積したナレッジや知見をSlackやesaなど会社のオンラインコミュニティへ積極的にシェアすることも求められます。つまり、会社と部門のミッションに対して定量的に成果を出すか、ナレッジや知見を組織コミュニティに還元するかといった2つの軸で個人が評価されるようになるでしょう。換言すれば、個人でノウハウを囲ってしまう人、何となく頭良さそうに評論だけしている人、かけた時間や労力のアピールが上手い人は評価されなくなります。明確な指示がないと動かない人、曖昧な状況に置かれたときのストレス耐性(曖昧耐性)が低い人もアウトプットが減っていくでしょう。企業は、間接部門含めて経営に対する貢献を定量的に示す指標の設計力が求められます。ミッションドリブンで主体的に動ける人とそうでない人は二極化していきます。会社と従業員の関係性が変わる契機となりそうです。

○販売管理費の内訳が変わっていく
これまで販売管理費の大半を占めていた「人件関連費」「地代家賃」が減り、予算の立て方が変わっていくでしょう。人件関連費は、給与・賞与・退職金・通勤費・旅費交通費・交際接待費です。年功序列は完全に崩壊し、成果ベースの評価制度の導入によって人材の流動性は高まり、正社員と業務委託の境目は希薄化します。リモートワークによって通勤費や旅費交通費、交際接待費は減るでしょう。一方、リモートワーク支援金や家賃補助のような福利厚生費の比率は高まっていきます。孤独感の払拭に使うバーチャルオフィスや、オンライン飲み会のツールといった社内のIT投資も増えるでしょう。

○業務のマニュアル化が進む
対面での研修や営業同行、OJTといった背中で見せる的な育成方法は難しくなっていきます。その代わりに業務のマニュアル化が進み、ノウハウを明文化して共有する仕組みが求められます。あうんの呼吸がなくなり、いかに企業の形式知を具体化するかが人員育成の鍵となるでしょう。社内研修を行う方法が減ることで、職種をローテンションしていくメンバーシップ雇用より、仕事に人がアサインされるジョブ型雇用が増えていきます。キャリアパスも会社が用意したローテーション型ではなく、自立自走型のキャリア構築が求められるでしょう。キャリア設計するスキルが求められます。

○テクノロジーへの適応力は必須スキルになる
Zoom、Slack、Miro、esa、Toggl、Backlog、Trelloなどのオンラインコラボレーションツールの活用が必須になります。こうした新しいツールに適応することが求められるでしょう。使い方を誰かに教わるのでなく、わからないことはググるといったリテラシーも必要です。一方、ナレッジが各ツールに分散してしまうため、会社としてナレッジを蓄積し、検索性を高め、全員が即時に活用できる仕組みをいかに作れるかが求められます。

○SaaSは連携性が重要になる
業務のオンライン化に伴って、営業、人事、経理、法務などのSaaS導入は加速化するでしょう。但し、それぞれのSaaSが分断されている中で多くのSaaSを導入すると非効率が発生します。例えば、勤怠管理はツールA、経費精算はツールB、SFAはツールC・・・といった形でやみくもに色々なSaaSを導入しても非効率です。企業のバリューチェーンは連携しているからです。SaaS間の連携を図っていく動きが出てくるでしょう。どれとどれが連携しているのかといったSaaSのエコシステム構築が新たな論点として出てきます。

○文章力が組織の生産性を規定する
ナレッジの共有、業務のマニュアル化、社内外のテキストによるコミュニケーションが増えることで文章力が組織の生産性の規定要因になるでしょう。何を言いたいのかわからない文章、論点が明確でない文章は組織の生産性を下げます。「目的」「背景」「経緯」「メリット・デメリット」といった構造化された文章フォーマットを作る必要がありそうです。

○商談はスライド作成力が求められる
 ビデオ会議で営業や商談をしている方も増えています。その際、画面共有でプレゼン資料を用いることがほとんどでしょう。プレゼンで用いるスライドが文字ばかりで、フォントサイズは小さくて読みにくく、図解表現が稚拙で、必要以上に多くの色が使われている資料だと視認性や可読性が低くなり、それだけで商談はうまく進まないでしょう。端的に、わかりやすく、相手に刺さるスライド作成力が求められます。

○Must Haveなものだけが残る
仕事でも、プライベートでもなくてはならない“Must Have”なものだけが残るでしょう。裏を返せば、あったらいいなといった“Nice to have”なものは淘汰されます。対面での会社勤務と違って、在宅勤務では上司や同僚に細かい相談がしにくくなります。例えば、これまで資料作成の進捗を20%・40%・60%・80%の完成度で4回相談していた人が、在宅勤務で同じことをやろうとすると毎回ビデオ会議を開催しなければならず非効率です。細かい相談よりもまずはアウトプットを出してフィードバックをもらい、自分で仕上げていくラストマンシップが求められます。仕事では、これまで慣習的にやっていた無駄な業務(例えば、誰も読んでいない議事録作成や参加者の発言が少ない定例会)はなくなっていきます。コロナ禍で商業施設やお店が長らく閉まっています。プライベートでもミニマルな生活に慣れて、承認欲求や自己顕示欲を満たす過剰な消費や華美な生活は減っていくでしょう。

○リーダーシップはビジビリティが鍵になる
オンラインによる業務が当たり前になることによって、リーダーシップのあり方も変わるでしょう。これまでは膝と膝を突き合わせて意見を傾聴し、議論しながら物事を決めていたリーダーも、物理的に離れているメンバーを束ねてリーダーシップを発揮する必要があります。そのためにはビジビリティ(Visibility)が重要です。ビジビリティとは、頻度高い情報発信と傾聴、顔が見えるコミュニケーション、業務以外で感情を分かち合うなど、リーダーの機能価値と情緒価値の両面から存在感を出していくことです。オンライン環境下でもチームを鼓舞する、こまめにSlackでスタンプや返信をするといったオンラインコミュニティにメンバーを巻き込みスキルが求められます。ビジビリティが低いリーダーの存在価値は減っていくことになるでしょう。

○新しい職種・職業が生まれる
例えば、大人数の参加者をオンライン上でファシリテーションするオンラインファシリテーターや、特定の領域で専門的な活動をしていた方がオンラインサロンの主宰をするといった新たな職種や職業が生まれるでしょう。プロダクトのオンラインメディア化、オンラインメディアのプロダクト化といった「世界観」、「共創」、「コミュニティ」が鍵となるD2C市場も拡大するでしょう。

○組織はよりフラット化していく
従来の組織図の意義が薄くなるでしょう。社長を頂点とした部長・課長・次長といったいわゆるピラミッド化した組織図や指示系統だと機動性が低くなります。組織の階層構造による間接コミュニケーションは減り、プロジェクトのオーナーがメンバー全員に指示するようになります。従来の等級制度の意味も希薄化し、等級や肩書が重要な時代ではなく、組織に貢献する人の存在感が増していきます。等級や肩書がなくなることで、給与の原資配分方法や、人件費コントロールも変わっていくでしょう。採用基準も大きく変わりそうです。

○オンとオフの切り替えがメンタルヘルスに直結する
常時オンライン(Always on)の状態からいかに脱却化させるかがメンタルヘルスの重要対策になるでしょう。一斉出社・退社がなくなり、子育て中の親は子供が寝た後に仕事をしたり、コアタイムがないフルフレックス制を取り入れたりするとオンとオフの切り替えが難しくなります。昼夜問わずSlackやTeamsの通知がなる、といったことは精神衛生上よくありません。オンとオフの切り替えをするために、会社としてオンラインハッピーアワーを取り入れたり、オンラインランチの雑談タイムを設けたりといったオンとオフの切り替えを推進する施策が求められます。

○バリューが変わっていく
ビジョン・ミッション・バリューの中でも特にバリュー(行動指針)は変わっていくでしょう。ノウハウをオンライン上で積極的に公開した企業に人が集まり、オンラインツールによってリアルタイムのコミュニケーションが求められ、他者を慮る人に共感が集まるようになります。会社に所属する正社員の意義はミッションとバリューのコミットメントに収斂していくため(業務委託契約は業務にコミットしていく)、組織におけるバリューをどう変えていくのかが重要になります。これまでバリューの体現度を360度評価や社内アワードで表彰していた企業も、新たな表彰制度をどう運用していくかかが問われることになるでしょう。

○最後に
最近、ビルコムの強みは独立系ならではの変化適応力ではないかと考えるようになりました。外部環境が大きく変わっても、その変化に適応し、俊敏に経営スタイルを変えていく。企業経営のニューノーマルは一定ではなく、時々刻々と進化させていくものです。アフターコロナに向けて、新たな経営の枠組みを共に創っていきましょう!

2020年4月1日水曜日

20新卒入社式式辞「平常心」


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2020年度は4名の新卒が入社いたしました。過半の社員が在宅勤務でビデオ会議からの参加でしたが、入社式を無事に執り行うことができました。式辞では「平常心」について述べました。

以下は式辞で述べた原文です。

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2020年4月1日
2020年度 新卒入社式 式辞
ビルコム株式会社
代表取締役兼CEO 太田滋

 皆さん、入社おめでとうございます。人類はいま、新型コロナウイルスの脅威にさらされています。世界を覆う都市封鎖、人の移動制限、世界貿易の縮小、金融市場の不安定性、医療崩壊が立て続けに発生しています。皆さんは、このような極めて特異な状況下でビルコムに入社されました。本日の入社式で皆さんを全員で迎えたかったのですが、大半の社員がビデオ会議で参加することをご寛恕ください。4名の皆さんをビルコムの仲間として迎えることができ、社を代表して皆さんの入社を心より歓迎いたします。世界的な危機に直面している中、式辞として「平常心」について述べたいと思います。

 学生から社会人になると感情の揺らぎがこれまで以上に大きくなります。仕事とは、相手に価値を提供して感謝と対価を得ることです。その過程には、努力があり、助け合いがあり、良い意味でのプレッシャー、そして成功と失敗両方の経験を積むことになります。常にうまくいった、ということはほとんどなく、自省と成長の繰り返しです。計画を作ったものの、想定外のことが起こり、軌道を修正し、それでもミッションを達成するために行動し続ける。良いときもあれば悪いときもある。こうした感情の揺らぎに対して必要なことは「平常心を保ち続ける」ことです。どんなことがあっても、信念を貫く力が必要です。

 では、平常心を保ち続けるためにどうすればいいのでしょうか。それは、目の前にある、自分にしかできないことを毎日やり続けることです。周囲の雑音に気を取られることなく、小さな行動の積み重ねが大きな未来を創るのです。先日、皆さんの先輩である2017年新卒入社の社員から「新規事業について相談したい」と言われて、食事に誘いました。志あるスタートアップのPRを支援したい。しかし、スタートアップはお金が潤沢にない。お金という対価に囚われずに支援する新たな事業を始められないか、という内容でした。私の判断は「すぐに実行しよう」でした。2003年から17年間、経営トップを務めてきた経験から、行動しなければ見えてこないものがあると知っているからです。新しいアイディアや新規事業は一朝一夕には出てきません。その社員が見せてくれたA4のノートには5ページ以上に亘り、新規事業に関する理念や構想の手書きメモがびっしりと書かれていました。平常心を保ち、目の前にあることをやり続けることで新たな視座が広がります。私は皆さんに、入社1年目、3年目、5年目の節目に「平常心を保ち続けられましたか?」と自問することを求めます。

 現下の情勢でも同じことがいえるのではないでしょうか。確かに今は先が見えない状況です。しかし、出口のないトンネルはありません。毎日入ってくる暗いニュースや評論に惑わされることなく、平常心を保ち、自分にしかできない目の前にあることをコツコツとやり続ける。こうした毎日の積み重ねが、企業と社会の持続的成長に貢献する最善の行動だと確信しています。今日から皆さんは、ビルコムの一員であるとともに、自身の言動に責任が生じるプロフェッショナルでもあります。成功したな、良かったなと思ったときは奢りと昂りに気をつけ、失敗して辛いな、苦しいなと思ったときはその想いを仲間に分かち合い、連帯感を糧に前を向いて乗り越えてください。そして、ビルコムのビジョン「世界をより感動できる社会にする」をともに実現してまいりましょう。データとデジタルで新しい価値を生み出すビルコムへの入社を心からお祝いいたします。本日は誠におめでとうございます。


2019年11月23日土曜日

博士号取得への道


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経営者をやりながら8年かけて博士号を取得した経験を10つのポイントにまとめました。

 1. 査読が通らなければ意味がない
 2. リジェクト経験値を高めよう
 3. 修正リスト(List of alterations)を作る
 4. 先行研究は主張を補強する根拠
 5. RQ・データ・手法の一貫性はあるか
 6. ツールを活用して効率化を図る
 7. 博士課程はプロジェクトだ
 8. 博士論文と学術論文は全く違う
 9. 博士学位は人に与えられるもの
 10. 博士学位の先にあるもの

社会人で博士課程に挑戦している方、これから博士課程に進学される方の一助となれば幸いです。


2019年11月20日水曜日

リーダーシップバリュー


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このエントリーは2019年11月の社内報に寄稿したものです。

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 2019年9月6日に開催された全社ワークショップを皮切りに、ビルコムにおけるリーダーシップの在り方を約2ヶ月かけて議論を重ねてきました。きっかけは、2019年度上半期の社員満足度調査の結果です。リーダーシップに関する項目が軒並み低かったのです。例えば、「チームや組織の連帯感」は4点満点中2.16点、「専門性を高める支援」は2.13点、「マネジメントの期待が明確で共感できる」は2.18点でした。評価制度の改定や、フレックスタイム制のコアタイム変更、福利厚生等のオフィス環境の整備といったハード的なことも重要ですが、今期の全社方針「人間中心の次世代PRエージェンシー」を目指すためには、そこで働く人間のソフト的な側面も強化しなければいけない、と感じた瞬間でした。

 こうした問題意識をもって、9月6日の全社ワークショップでは、全社員で映画「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」を題材に、ビルコムで求められるリーダーシップについて約3時間にわたって議論しました。その後9月11日の夜に、部長以上の役職者10名で全社ワークショップにて発表された意見をもとに大枠の方針を決めました。こうしたプロセスを経て、働きがい強化部の部長から素案が私に提示され、その素案をもとに私の方で最終的なものを仕上げました。こうして完成したリーダーシップバリューが、1)分かち合うチカラ、2)変革するチカラ、3)士気高揚のチカラの3つです。
















 ビルコムで求められるリーダーシップに必要なことは、「組織内の信頼関係」、「変革の具現化」、「他者への積極的な関与」という3つではないかと思料したのです。3つのリーダーシップバリューに込めた想いを記します。

1)分かち合うチカラ
 組織内の信頼関係を築くためには、自分の夢と、素直な気持ちを互いに語り合うことが必要だと考えました。働き方の多様化、効率性の追求といった世の中の流れをそのまま受けていくと、組織内のコミュニケーションは業務に関するタスクや報連相だけになってしまいます。そうすると、組織は徐々に殺伐としてきて、結果的にチームワークが機能せず非効率になっていきます。これを私は、合理の追求による非効率化と呼んでいます。そうならないために、リーダーは夢と感情を分かち合い、チーム内の人間的つながりを築くことが求められます。人間的つながりがあれば、他者視点の仕事になり、寛容さが生まれ、相互理解が進み、結果的に生産性が高まるのです。

2)変革するチカラ
 このリーダーシップバリューには、現状維持がそもそも経営のリスクという前提があります。だからリーダーは変革を具現化しなければなりません。論を俟ちませんが、変革することがゴールではなく、どのように変革すればチームがよくなるのかを考えるのがリーダーの仕事です。変革の方向性を定めるには、外の世界を知る必要があります。外の世界を観察し、自分のチームが抱える諸問題の中から真の問題は何かを見つけます。問題提起だけでは何も変わりませんので、リーダーがコミットして、メンバーと共創しながら解決することで、変革を具現化していきます。

3)士気高揚のチカラ
 リーダーは、人々が反応し、この人についていこうと思える人物であるべきです。それは生まれ持った性格や人徳といったことではなくて、社内で育成できる素養を規定したいと思いました。社内の多くの議論から、ビルコムのリーダーはトップダウン型では機能しないことが明らかになっていました。メンバーの考えや将来のありたい姿を傾聴する。傾聴した内容をただ聞き流すのではなく、励まし、承認することでモチベーションを高める。すなわち、リーダーは他人の人生の一部を背負っていることを自覚し、仲間の成長を、スキル的にも、人間的にも支援するといった価値観を持つことが大事ではないかと考えました。


 リーダーシップバリューを決めた経緯と内容に込めた想いを綴りましたが、これ以外にも多くの意見が出ました。例えば、リーダーには真摯さや礼節、前向きさ、努力が必要といった意見です。しかし、それらは既に全社の行動指針「ビルゲン」で規定されていること、またビルコムの企業文化として包摂されていることから、あえて明記する必要はないという意見を尊重しました。

 リーダーシップは必ず育成できる。そう信じています。3つのリーダーシップバリューは育成のためにあるものです。リーダーシップバリューは人間が持つ価値観なので外からは見えません。見えるのはリーダーシップバリューを体現する行動です。リーダーシップの体現度合いを自己・上長・360度で評価します。多面的に評価することで自己認識と他者認識のギャップを明らかにします。そして、ギャップを埋めるための育成プログラムを行います。この一連のプロセスを運用することで、はじめてリーダーシップバリューが活きるのだと思います。蛇足ですが、リーダーシップバリューを策定するにあたって特に参考にした文献は、「リーダーを目指す人の心得(コリン・パウエル著)」と、日本経済新聞の「私のリーダー論」です。

太田滋