2014年9月23日火曜日

將たる所以:リーダーの資質


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ビジネススクールに通っていた際、「リーダーシップとは他者の人生に良い影響を与えること」という教授の一言が胸に刺さり、マネジメントとリーダーシップの違い、自身が他者に貢献できることは何かということを少しずつ考えることができるようになったように思います。

それ以来、あまりリーダーシップに関する書籍は読んでこなかったのですが、毎週月曜の全社朝会で行っている「社員持ち回り書籍紹介」で、梅原猛氏の『將たる所以ーリーダーたる男の条件ー』と松下幸之助氏の『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』が別々の社員から紹介されて、その二冊を本日読みました。

『將たる所以』は哲学者である梅原猛氏が著したこともあり、日本最大のリーダーは聖徳太子と藤原不比等として、過去の歴史や思想と照らし合わせながらリーダーの条件を10つ挙げています。改行後の( )括弧内は私の理解・解釈です。













1. リーダーは明確な意志を持たなければならない。(社会をどうしたいのかといった視座を踏まえた意志が必要)

2. リーダーには時代の理念が乗り移らなければならない。(リーダー像は時代や組織に呼応する)

3. リーダーは孤独に耐えなければならない。(心の傷が孤独の忍耐力を強くする)

4. リーダーは人間を知り、人間を愛さなければならない。(味方だけでなく相手の人間も知り、愛すること)

5. リーダーは神になってはいけない。(神になると恐怖の組織文化になり継続性が失われる)

6. リーダーは怨霊をつくってはならない。(怨霊は内・外の両方に存在する。どのように発散させるかが手腕)

7. リーダーは修羅場に強く危機を予感しなければならない。(普段は円満なリーダー、修羅場は鬼になる)

8. リーダーは意志を自分の表現で伝えなければならない。(形式を重んじた表現ではなく内面からにじみ出る人間性も表現することが大事)

9. リーダーは自利他利の精神を持たなければならない。(自利と他利のバランスを常に客観しすること)

10. リーダーは退き際を潔くしなければならない。(リーダーはリーダーになった理由と実績があるがそこに甘んじない)

続いて『リーダーになる人に知っておいてほしいこと』ですが、この本は松下政経塾の方々が松下幸之助が過去に語ったテープから要諦をまとめたものです。














リーダーになる上で、大切な人間力や、人としてのあるべきモラルや姿勢が説かれているように思います。下部は書籍からの引用です。

「ぼくは今日まで約九十年近いあいだ、いろいろな人を見てきた。なかには途中で商売を替えたりする人もあったけど、成功している人を見ると、やはり困難があっても途中でやめずに、初志を貫いていった人が成功しているな。

 そういうことから考えてみると、一事を貫くということは、非常にむずかしいようであるけれども、いちばんそれが効率的やな。ああでもないこうでもないと迷って、転々とする人がある。転々とする人は転々としたことによって成功するという場合もあるけど、概して失敗が多い。

 だから少々、「ああ、この仕事はもうひとつ自分に適しないな」というような感じがあっても、それを押し切って取り組むということに徹する。すると、嫌いだなと思っていた仕事も好きになって、だんだんそこに信用もついてきて、今度はもう自分でやめるにやめられない、否でも応でもその仕事をしないといかんということで、もう腹が決まってくる。こういう人は成功している。

 だから、僕の体験から言うと、簡単に初志を変える人は、失敗することが多い。初志を貫いてやった人のほうが成功することが多いということは言えるな。」

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二冊を読んで思うことは、今日のように安易な時代だからこそ、初志貫徹が大事。リーダーは人としてのあるべき原理原則に回帰して、思想や哲学をしっかり持った上で組織運営にあたること。そして、リーダーは、ある意味で危機に陥った時や行き詰まった時に自然と内部から出てくることが多いこと。「国乱れて忠臣見る」ですね。

2014年9月8日月曜日

敗軍の法則


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今週号の日経ビジネスは自身の実体験と共に学びになりました。









第一特集「敗軍の法則」では、約四十年続いてきた連載コラム「敗軍の将、兵を語る」の共通項を導出したものです。

1. 暴走

2. 執着

3. 隠蔽

4. 忘却

5. 慢心

という五つの敗軍の法則が事例とともに紹介されています。

暴走、隠蔽、慢心は読んでその如くですが、「執着」は主力事業や単一ブランドに依存していることを指しています。

ビジョンや思想がなく、儲かりそうなら何でも手を出す節操なき拝金主義には全くもって賛同できませんが、過去の成功体験や好き嫌いの主観による執着が事業を傾かせることはとてもよくわかります。自社・自分を客観視できない経営は身を亡ぼすということ。


「忘却」は、過去の過ちから得た教訓を果断に実行し続ける継続力のこと。過失はどの会社でも起こります。再発防止のために仕組みを作り、学び、継承していくのですが、その継続性をどう担保していくのかが重要。

失敗は成功の母。

社内で「もっと失敗してくれ」とよく言うが、失敗だったと思えるくらいの挑戦文化の醸成をより推進していきたいです。


2014年9月1日月曜日

新ビジョンに込めた想い


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 「世界をより感動できる社会にする」−−− 2014630日の12期下半期の全社総会で、新しいビジョンを発表させて頂きました。

創業初の大赤字、事業再生といった激動の2年間を乗り越えた仲間たちと一緒に目指すものです。当社は2003年に創業した際、経営理念として「感動の創造」、ビジョンとして「世界一のコミュニケーション企業」を掲げていました。2014年まで、ずっとこの経営理念とビジョンを内外に伝えてきました。この理念とビジョンで入社してくれた社員も多いはずです。11年間会社の支柱になっていた理念とビジョンを変える−−−それは、会社の生き様を変えるという大きな決断でした。私の心にあったのはただ一つ、株式会社としてより大きな社会貢献をしていくこと、すなわち未来への着実な成長と、その土台となる企業体質を新たに築き上げることでした。















 このビジョンを新たに策定するにあたって、こだわった点は次の三つです。まず、自分たちがどうありたいか、という利己的な考えをやめること。会社はお客様がいてこその存在です。それを忘れて、自我の欲求を追い求めると自壊が始まります。身を以て体験してきたあのような愚かな失敗はもう繰り返したくない。だから、ビルコムはどうなりたいのか?といったことではなくて、ビルコムは社会にどう貢献するのか?という視点を持つことから始めました。次に、「感動できる社会」とは何かを明確にすること。そして最後に、「良質なコミュニケーション」にこだわったことです。


 良質なコミュニケーションを通じて、世界をより感動できる社会にしよう。では、感動とは何だろうか?一つは、社会的矛盾の解消です。日本にも、海外にもまだまだ多くの社会的矛盾があります。もっとこうしたら便利になるのに。本当はこうすれば幸せになるのに。そのできない理由を事業で解決することです。次に、新しい文化の創造です。お客様の商品やサービスを一過性の話題や流行だけで終わらせるのでなく、100年続く文化にしていく。その文化をお客様と一緒に創っていくことです。もう一つは、努力が報われる社会にすることです。人の褌で相撲を取るような輩が蔓延るような社会にしたくない。真摯に努力している人たちが、きちんと正当に報われる社会にしていく。社会的矛盾の解消。新しい文化の創造。努力が報われる社会へ。この三つを感動できる社会としました。


 私たちは、感動できる社会を、良質なコミュニケーションを通じて実現していくことを目指します。コミュニケーションとは企業と人を繋げるもの。企業と人。企業と企業。人と人。もっといえば、社会や地域、国同士のコミュニケーションもあります。あえて「良質な」コミュニケーションという表現をしたのはPRの視点からです。一方的に押し付けるような、生活者が嫌がるようなコミュニケーションは長続きしません。PRというこれまで11年間培ってきた共創志向の強みを活かして、世界をより感動できる社会にすることが私たちのビジョンなのです。


代表取締役兼CEO 太田滋