7月にベルギー・ブリュッセルに行ってまいりました。2年連続2回目。昨年と変わらず街並みが綺麗で、食事も美味しく、欧州らしくゆったりとした空気が流れていました。また、大先輩から慫慂されてアートに触れるべく合間を縫ってベルギー王立美術館に行ってまいりました。普段アートに触れるような生活を送っていないのですが、16〜18世紀のルーベンスやブリューゲル、ダヴィッドの絵はみているだけで、なんだか魂が吸い込まれるような感覚を覚えました。
そんな体験に触発されて、復路の機内では、書籍『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」』という本を読みました。論旨は、動的な社会の中において論理的思考だけで経営していくのは蹉跌をきたすといったものです。就中、社内にビジョンという美意識がなく数字だけを追求するあまり、法的なグレーゾーンでコトを始め、炎上や批判といった外圧によってコトを終えるといった虚しさや、ファクトやロジックを基にした意思決定はコモディティ化して差別化を図ることができないといった話は、広告・PR業界に身を置く者として耳が痛かったです。
ベルギーから帰国後、全く別の流れでメディアWiredが主催する新しい旅のプラットフォーム「REAL WORLD」の報告会に参加してきました。題目は「低成長時代の成長戦略〜メガカンパニーからグッドコミュニティの時代へ」というドイツ・ベルリンのスタートアップを視察したもので、ヤンチャな規模の拡大競争とは違う企業の在り方を模索していた私にとって興味をそそるものでした。また、財政が極めて健全なドイツのスタートアップの在り方を垣間見たかったという動機もありました。
そこで話されていたことは、大言壮語な”世界を変える”を掲げ、破壊的イノベーションを前提として、既存の市場からリプレイスを狙い、無理にIPOして株主のために死ぬほど働くといった米国的スタートアップとは様相が大分異なりました。曰く、ベルリンのスタートアップはアーティストのように起業する、と。暮らしをより善くするために分断されていたものを統合する、いわば創造的イノベーションを目指しているといったものでした。スケールはしていないが生活は豊か。経済よりも文化が大事。CompanyではなくSociety。企業の活動が社会活動だったり、文化活動だったりで、そこに経済性が随伴する。一つの答えに向かって(ナチのように)熱狂的に向かっていくのではなく、答えに多様性を持つという価値観を目指しているとのことでした。
ブリュセルで触れたアート。帰路に就く間に読んだ「経営には真・善・美が必要」との書籍。帰国後に聞いたベルリンのスタートアップが目指す答えの多様性。それらが線で繋がったような気がしました。
分断から統合へ。
破壊から創造へ。
私たちが日々取り組んでいるマーケティングコミュニケーションは全て手段です。広告も、PRも、SPも、デジタルも全ては手段。そして、その手段は未だに分断されています。もっと私たち自身が主導して手段を統合し、企業の目的をイノベーションしていかなければなりません。手段のイノベーションばかりを考えて、点のソリューションをいじくり回すのではなく、マーケティングの目的そのものの価値定義を変えていく企業体になっていこうと私自身の見識を改めました。少子高齢化、市場の成熟化、デフレ、ブランドの老齢化といった日本市場の課題に直面している企業に対してマーケティングの側面から解決に資したいと思います。