三連休の最終日に読了した本「日本発のマーケティング」。先日開催されたJMAのセミナーでいただいたものです。
現在、慶應義塾大学商学部に属される清水聰教授の著書は、私がMBAでリサーチペーパーを執筆する際、主査から勧められて初めて読み、私が研究者の道へと進む契機となったものです。特に「新しい消費者行動」は、世界の研究を体系立てた消費者行動研究の原点のような貴重な一冊だと思います。
「日本発のマーケティング」はタイトルの通り、従来の米国を参考とした社会科学(主に心理学・経営学・マーケティング学)の”壁”を打ち破ろうという意思をひしひしと感じ取れる実務寄りの本です。
この問題意識は、私の実務(ビルコム)における非構造化データの多変量解析、そして学術(博士課程)における異文化マーケティング・国際的消費者行動の研究課題にも共鳴するもので、大変勉強になりました。
マーケティングは、企業・生活者の両視点から考察するべきものですが、得てしてその視点が混在すると、実務・学術両方において、何を目的として命題(研究課題)を立て、どのようなデータを用い、何を分析手法とするのかが破綻することが少なくありません。
本著は、これまでの消費者行動研究を礎としながらも、様々な実務的データを用いて、消費財を扱う企業の視点から「循環型コミュニケーション」なる新たなモデルを提示しています。具体的には、ELM(Elaboration Likelihood Model)とAISASの融合とも言えるでしょう。
少子高齢化、市場の成熟化、機能訴求の限界といった3つの大きな課題を突きつけられた日本市場において、マーケティングがどのような世界に向かうのか。それは、海外市場を開拓するという安易な発想ではなく、私は逆説的にガラパゴス型マーケティングに帰結すると感じています。
インターネットで消費行動が動かない日本、Hallが言う高コンテクスト文化である日本、Anonymousを好む日本(謙遜文化にも通ずる)といった市場特性を踏まえて、これからの「日本発マーケティング」を行動レベルで仮説検証していくしかありません。
その中心にあるのがPR・口コミである。
私はそう確信してなりません。
太田滋
ビルコム株式会社
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2013年9月23日月曜日
2013年9月22日日曜日
再読「なぜ、我々はマネジメントの道を歩むのか」
数年前に友人から勧めてもらった書籍「なぜ、我々はマネジメントの道を歩むのか」を連休中に再読しました。
先週、夜中に急に読み返したくなって家の本棚を探したのですが、今年引っ越した際に処分してしまったようで、Kindle版で買い直しました。
処分してしまったということは、以前の私にはどうやら心に響かなかったようです。しかし、この連休中に一気読みしてしまう位、なぜか今の私には反芻することが多かった。
1. 「下座の行」
2. 「マネジメントするべき対象は心」
3. 「人間学は正対すること」
今年は、まさにこの三つのことを人間観として経験した年でした。そして、自分の浅はかさに気付かされました。
全ての事象は逆説的に自分に帰結するということを、生涯忘れずに愚直に経営をしっかりとしていこうと思った三連休でした。
太田滋
ビルコム株式会社
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2013年9月9日月曜日
コーポレートブランド三要素VI・BI・MI
NGKという完全招待制の小規模勉強会を13年間続けています。NGKは「Next Generation Kids」の略で、”次世代を担う純粋な気持ちを持った大人”でありたいという願いを込めて命名しました。
テーマ担当は持ち回りで運営しており、前回のテーマ担当だった総合広告会社の友人から学んだコーポレートブランド三要素をもとに、全社ワークショップを先日開催しました。
■コーポレートブランドの三要素
1. Visual Identity (VI)
2. Behavior Identity (BI)
3. Mind Identity (MI)
業務から離れ、この三要素を個人レベルに落とし込むことが目的です。ジョハリの窓でいう「盲点の窓」を、VI・BI・MIの観点で、同僚三人からフィードバックをもらうという形式を取りました。(途中である映画も観たのですが)
<フィードバックシート>
このシートをもとに、3人からフィードバックをもらうことで、”自分では分かっていない自分”(盲点の窓)を探索します。
戦略PRコンサルティングというと、できあがったブランドを、見せ方やコンセプトだけ変えて、上手に伝達するということが生業と思われがちです。
しかし、実はできあがる前のブランドをどう創るのかが大切なんですよね。
最近、当社でも商品の思想からネーミング、その後のコミュニケーション(マス/デジタル問わず)、そしてブランド価値測定までを、戦略から実行までお手伝いする案件が増えてまいりました。
この社内ワークショップは、自社という内向きのものではなく、お客さまにご提供するサービスの根幹を、体験型のワークショップとして、管理部門含む全社で行ったものでした。
ブランドコンサル・広告・PR・SP・制作・デジタル・イベント・・・といった供給者論理の垣根を融解させ、新たな業態を生み出すことを目指している志は、創業以来変わりありません。
コーポレートブランド三要素を礎に、お客さまへの価値還元を、より強化すべく全社で意識を統一したワークショップでした。
太田滋
ビルコム株式会社
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2013年9月8日日曜日
真の東京五輪開催に向けて
2020年東京オリンピック開催が決定しました。
安倍首相、猪瀬知事を筆頭とした関係者全員のチームワークがあってこその賜りに敬意の念を抱きました。
一方で、開催地決定はあくまで出発地点。様々な利権やしがらみとの葛藤をどのように調整していくことを考えるのも大切な気もします。
7年後というと私は43歳。
当社は18期を迎えることになります。
日本という国はどうなっているのでしょうか。
1. 財政問題
来年からの消費税増税と並び、法人税減税の問題、財政赤字の状況(歳入・歳出構成)はどうなるのでしょう。
2. 構造的問題
少子高齢化や、一人頭GDP低下などの日本が抱える構造的問題はどうなるのでしょう。
3. 自然災害問題
喫緊の汚染水に限らず、地震・台風大国というリスクに防災・減災対応も問われることでしょう。
当社のような、まだ小規模な組織が上述した問題に貢献できることは多くないと思います。しかしながら、マクロの潮流を読み取りながら、当社が標榜する「コミュニケーションで感動を創造する」という理念に向かって、何ができるのか、ということを、口先評論ではなく、行動レベルで進めていく必要があると思っています。
「できない理由より、できるための手段を考えよう」
とは、当社の行動指針(ビルコムの原則:ビルゲン」の一つですが、この視点をもって、日々自分たちに何ができるかを考えて、会社を経営していこうと思います。
太田滋
ビルコム株式会社
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2013年9月2日月曜日
「不格好経営」から学んだこと
(前置き)
昨日アップしたブログ「半沢直樹」データ分析と同様のことを事業構想大学院の江端さんがアドタイで既に書かれていましたね。ご本人から指摘いただいたわけではありませんが、
>江端さん、大変失礼しました。
(本題)
さて、半沢直樹ネタは来週くらいにアップするとして、今日は「不格好経営から学んだこと」を題材にあらゆる仕事に共通する3つのフェーズについて書いてみました。
結論から申し上げましょう。
あらゆる仕事は3つの段階に分類されるのではないでしょうか。
1. 出発前フェーズ (試行より思考で止まっている段階)
2. 量フェーズ (試行しているが作業になっている段階)
3. 質フェーズ (試行と思考が同時に進んでいる段階)
日々の打合せでは、
「どうすればできるだろうか・・・」(出発前フェーズ)
「あれをこうしておいて! → はい(そのままやる)」(量フェーズ)
コンセプト設計、初期仮説立案、PDCA運用、ポーター、ロジャース、ジョンコッター、ランチェスター・・・のような色々と小難しいコトを語る人たちが世の中多いと思いますが、正直、世の中のビジネスマンは皆こう思っているのではないでしょうか。
「早く行動に移そうぜ」
「数字をつくってから語ろう」
「結果が出なければ意味ないと思う」
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思考から試行へ
作業から成果へ
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思考や作業のジレンマから脱却するためには、
「今、私たちはどのフェーズ(出発前・量・質)にいるのだろうか?」
ということを日々自問する必要があると思うのです。
これは私の自戒でもあります。
今年の7月くらいに南場さんの書籍「不格好経営」が話題になったと思います。
実は、私読んでいなかったのですね。不格好経営の本を。
そのころ、南場さんが登壇されていたセミナーやコラムなどを拝読し、”同じようなことが書いてあるのだろう”と高を括っていたのです。
定期的に開催している当社経営メンバーとの会食時に、「不格好経営」が話題になりました。
私は知ったかぶりをして、フムフムとうなずいたり、セミナーやコラムの内容を持ち出したりして、読んだ風の身振る舞いをしていました。
その場には、社外経営メンバー(某経営者)がいたのですね。
その経営者の方は、私の知ったかぶりを見透かしたのか・・・
「太田さん、不格好経営読んでないでしょ?」
「そうなんです、実は読んでいないんです」(ショボン)
「(笑)だったら、読んでからこい!」(爽快感ある言い切り方)
という御叱咤を頂いてしまいました。
ああ、自分は読むという行動(量)にも移さず、自分の考えを述べるという貢献(質)にも至らない出発前フェーズにいたんだな、と。
書籍を読むという低レベルな例えで語りましたが、全ての仕事は3つの段階によって進むと学んだわけです。
1. 出発前フェーズ (試行より思考で止まっている段階)
2. 量フェーズ (試行しているが作業になっている段階)
3. 質フェーズ (試行と思考が同時に進んでいる段階)
当然、その日は「読んでからこい!」が忘れられず、即時に、量フェーズ→質フェーズへと移行し、翌週の経営会議で1分間のアジェンダを入れて下記のスライドを用意しました。
この話のオチは、経営会議のアジェンダが多く、
スライドは配布するだけに留まったとのですが。(涙)
そんなもんです、経営とは。
それからです。経営者としての自分、そして、各部門、各プロジェクト、各業務が、出発前・量・質どのフェーズにいるのかを意識するようになりました。
太田滋
ビルコム株式会社
http://www.bil.jp/
2013年9月1日日曜日
半沢直樹 vs. 倍返し 口コミ対決
「半沢さんからみて伊勢志摩ホテルはどう映りますか?」
「瀕死の重傷を追った巨像・・・」
第六話で心に残った名言です。
さて、最高視聴率が30%超えた人気ドラマ「半沢直樹」ですが、
社内・社外で打合せさせて頂いた際にもよく話題に挙がりますよね。
「いや、それこそ倍返しですね・・・」
「いえいえ、日本社会をよくしていこうじゃありませんか!」
「半沢直樹なみに猪突猛進しないでくださいよ」
なんて会話が日本中飛び交っているような気がします。
7月7日から始まったこのドラマですが、
Twitterではどのような状況になっているのでしょうか?
本日は、半沢直樹ネタ第一弾として「量」の視点で比較してみました。
データ収集期間は、
第一話放映の約一週間前:7月1日から
第六話放映の翌日:8月26日まで
抽出キーワードは「半沢直樹」と「倍返し」です。※一部ノイズ除去
約2倍のボリュームで圧倒的に「半沢直樹」が多いですね・・・。
「倍返し」はネガティブ要素が多いからなのでしょうか・・・。
時系列データをグラフにすると下記のような形になりました。
視聴率との相関が高そうですね。
・第三話から第四話にかけて下落した。
・第五話・第六話の投稿数は第一話の2倍以上(倍返し)。
この辺りは、視聴者の番組に対する「熱量」(≠量)とも関係ありそうです。
続きは、次回に書いてみようと思います。
太田滋
ビルコム株式会社
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